◆選り抜き記事◆
13星座占いとはなんだったのか

2006年10月6日
一時期やたらとあちこちで話題になっていた13星座星占い。
これからは13星座がメインストリームよ!と言わんばかりの勢いだったのですが、やはりというかなんというか、 あっという間に衰退してしまい、数年でどこにも見つけることができなくなってしまいました。 多分今となっては時効だと思うので、あの流行に対してちょっと一筆書いておきたいと思います。 こういうことはあの流行りの直中でも思っていましたので、きっと既にどなたかが書かれているとは思いますが、やはり一応。


初めて13星座占いなるものを目にした時は……「13」という時点で既に怪しいとしかいいようがありませんでした。 そもそも12という数に神秘思想的な意味があるのですから、それを無視した時点で占星術としては邪道です。 それでも、こういう占いもの(特に西洋占星術)に関しては一応興味はあるので、 どういう論拠でもってやっているのかは見ておこうと思って、はやり初めの頃雑誌だったかインターネットだったかで 少し調べてみました。その頃の説明を、私の覚えている範囲で書いてみたいと思います。


「星占いで自分の星座を見ていても、ちっともすっきりしない。そんな時、黄道付近を天体観測してみたら、 あらびっくり!射手座と山羊座の間(蠍座と射手座の間だったかな?)にぐぐっと蛇使い座がはいりこんでいるではありませんか! つまり、黄道上にあるのは12星座ではなく13星座だったのです!これでは12星座占いが当たるはずがありません。 そこで、蛇使い座を加えて鑑定してみたところ、その方が自分の性格にはよくあってる! やっぱり12星座の定義は今や古いものになっていたのです。これからは正確に13星座で鑑定すべきです!」

…とまあ大体こんな内容でした。これだけ読めば、ちょっと星占いを詳しくやった人なら、すぐさまおかしいことに気付くことでしょう。 そもそも、星占いで言う「星座」とは、いわゆる天文学的な意味での星座をさしません。
その定義とは、「春分点を起点として、全天を30度ずつに分割し、そこに星座の名をあてはめたもの」ということになります (実際にはもっと細かい定義になるかと思いますが、私なりに端折って書くとこんな感じ…)
つまり、黄道を実際に観測してそこに何座があろうがまったく関係ないのです。 いわゆる星占いでいうところの「星座」は恒星によって構成されるものをさすものではなく、惑星の位置を示すための座標であり、 もっと形而上的な考えに基づくものなのです。


13星座で鑑定すると、中には確かに「12星座よりあたっている気がする」人が出てきます。 しかし、それも12星座の範疇で解決する理由があるに過ぎません。 例えば地球より内側の惑星、水星や金星等は、地球からの見かけ上、太陽星座からそう遠くへは離れないものであり、 大抵の人は太陽星座を中心にその前後の星座にもっているものです。それをたまたま13星座で「こっちが本当の自分の星座」と言われれば、 「そういえばあたってる」ということになることが考えられます(13星座では12星座の一つ前または後の星座になってしまうケースが多い)。 13星座での星座の方がアセンダント(上昇星座)だったり、月がそこにあったりしたら、さらにその星座の影響が強く出ることになり、 勢い「本質」を示す太陽星座よりもそちらの星座の影響の方が自覚しやすい状況が出てきたりします。


ちなみに私は13星座で示された星座には一個も星を持っておらず、何一つピンと来るところのない事しか書かれていなくて、 その時点で感情的にも13星座はアウトでした…(>_<)


「12星座占いがあたっていない」というのはホロスコープによって詳細な検証がなされた物ではなく (そうでなくても占いの当たった外れたなんてあやふやなものですが)、単に12星座の太陽星座のみを念頭においた物であることは明らかでしょう。 というか、そういうことさえわからない人達によって恣意的に作られたのが13星座占いだったというのが実際のところだったんだろうなと 思っています。それが目新しかったためにマスコミ等に取り上げられたのでしょうね。
実際、太陽以外の星をどう解釈するかとか、アスペクトの考え方を13星座ではどう捉えるかとかいうことに関しては全然示されていなかったですし、
そういう意味でも物足りなかったです。
実際、まともに星占いをやっている人はこの13星座には関わってなかったみたいだし、 最初に思っていたとおり数年で消えていったし、やっぱりきちんとした体系をもたない占いはもろいな、 というのが結論です(同じように目新しい占いであっても、動物占いは古くからの東洋の占いに基盤があり、 それなりの体系をもっていました)。


これにはかなり補足が必要かと思います。というのも、この記事を書いてしばらくしてから、 いくつか新しい事実を知ることになったからです。

鏡リュウジ著の『占星綺想』によると、そもそも13星座というのは、イギリスの天文学者が 占星術の流行をいわば皮肉って揶揄する文脈で、「占星術における星座の概念は天文学的におかしい。 本来なら歳差によるずれを修正した上で、さらに黄道上に一部入り込んでいる蛇使い座をいれなくては。」などと 指摘したことに端を発しており、日本のマスコミがこれを「占星術の新しい解釈」と誤って(あるいは確信犯的に?) 吹聴してしまったというのが真相のようです。

なお、12星座占いにおける星座の定義は上記のようなもので大体間違いないのですが、これとは別にインド占星術等で用いられる 「サイデリアル」という区分法も存在します。これは、春分点を起点にするのではなく、主な恒星を基準に据えて 全天を分割するやり方だそうで、例えば「アルデバラン(牡牛座の一等星)を牡牛座の15度とする」というような 分割の仕方をします。(これに対して、春分点を起点に30度ごとに区切るやり方を「トロピカル」と言うそうです) 13星座の場合は、恒星によって形作られる実際の星座を元にしている点から、この「サイデリアル」の手法を参考にしたものと思われます (いずれにせよ蛇使い座を加えるのはブームの仕掛人の創案だと思われますが)。
ただし、「サイデリアル」は「恒星は惑星と違って不動であり変化しない」前提で用いられたと思われるのですが、 実際には恒星(春分点も含め)も数世紀に亘って観測すれば大きく移動しています。 いってみれば基準となるべき目印が動いてしまっている訳です。

古代の天文学者は既にそのことを知っており、暦としての整合性を維持するべく、春分点を起点として全天を12に分割する手法を 選択しました。今でこそホロスコープ上の星座は実際の星座と大きくずれていますが、古代はホロスコープ上の星座と実際の星座とは 完全に一致していたということです。
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