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コードギアス「血染めのユフィ」

2週間以上も前に終了したアニメのことを今さら…すみません。でも、録画していた分をこの週末に見てしまったのです。ひええ。
最近でこれだけ衝撃を受けたアニメはちょっとなかったです。この次の話(23話)をみるまで事情で2日空いてしまい、その間ぼんやりすると思いだしてしまうほどでした。後味の悪さ、薄ら寒くなるおそろしさ、凄まじかったです。制作サイドの狙いに面白いようにすっぽりはまっていた自分に愕然としました…でもここまでくるとむしろ心地よいかも…(M?)


「血染めのユフィ」。このサブタイトルを見た時、誰もがおそらく、ユフィがルルーシュの手によってかあるいは他の誰かの手によってか、瀕死の重症を負うか死に至るかという展開を考えたと思うのです。
スザクとの出会いをとおして、虐げられる「日本人」との共存をひたすらに願い、飾り物として名前だけの役職に就いている無力さに悩み、傷つきながら答えを探し求め、かつ建設的に実現させようとしてきたユフィ。彼女が考え出した「行政特区『日本』」は、不完全ながらも、ブリタニアと日本双方にとって一つの理想的な落とし所となるはずでした。
それなのに…

ルルーシュのギアスの力=「誰であろうと一度だけ絶対服従の命令を下すことができる」という特殊能力が暴走したことで、ユフィはあろうことか「日本人皆殺し」の命令を下され、自らの手で実行することになるのです。
堂々と、誰に恥じることもない方法で、誠意だけを糧に理想を実現しようとしたユフィ。「日本人」にとって希望の光になるはずだったユフィが、一瞬にして最悪の殺人鬼へと変貌してしまったのです。
「血染めのユフィ」。
それは、守るはずだった「日本人」を自ら虐殺して浴びる返り血にそまる彼女の姿。
この展開にはいくつもの価値や意識の逆転(善と悪、真実と偽り、平等と差別、天国と地獄…)が仕込まれていて、しかもそのあざやかなまでの急転直下ぶりがとても効果的に演出されています。そもそも、敢えて現実をなぞって「日本」を舞台にした戦争ものを仕込んだ辺りで、「日本」に対してどうしても感情移入をしてしまう舞台装置があったと思うのですが、分かっていてもやっぱりはまってしまっていたんですよね…だからこそ、ユフィのあの展開には理性を越えて衝撃を受けました。



もう一つ、この展開がリアルなのは、歴史上こうした虐殺は決して絵空事でなく、しばしば現実に起こっていることです…。
有名なのはナチスのユダヤ人虐殺ですが、「血染めのユフィ」に近いモチーフなのはむしろフランス史における「サン・バルテルミーの虐殺」のような気がします。

事件の首謀者は、“王妃(事件当時は息子である国王の摂政)”カトリーヌ・ド・メディシス。ただし、実際に命令を下したのは別の人物だという話もあり、それも今回のモチーフを思わせます。
争いは同じキリスト教の異なる宗派の間で生じていました。
正統派(国王派、カトリック)と改革派(カルバン派プロテスタント、ユグノー)とが対立する中、「正統派と改革派の平和的共存を図るために、正統派の有力者と改革派の有力者との婚礼を行なう」ということで催されることになった盛大な結婚式。その結婚のわずか7日後、聖なる祝日サン・バルテルミーの日に、忌わしい虐殺がおこるのです。その日は、先立って行なわれた婚礼を祝うために、多くの改革派の有力者が一堂に集っていたといいます。


ちなみに、正統派は国王など有力者をはじめ、国民の大半を占めていました。一方、改革派は弾圧される対象でした。
コードギアスと比較してみると、正統派=ブリタニア、改革派=日本(反政府勢力)の構図と重なります。正統派の王族が融和を進めながら、結果的に改革派を騙しうちにする形になった点も似ています。婚礼の祝儀と聖人の祝日に湧く晴れの日に、突如虐殺の幕が切って落とされ、惨劇と化したその構図もまた哀しいほどに似ているのです。


この時の婚礼の新婦は、カトリーヌ・ド・メディシスの娘。新郎は改革派の有力者、ナヴァル王アンリ(後にブルボン王朝の初代王となる。ブルボン王朝はフランス革命で断絶するあの有名な王朝)。
二つの勢力の「平和的共存」のために行なわれた「婚礼」とそれに続く聖なる祝日に、こともあろうに新婦の実母によって虐殺が引き起こされたというのです。
しかし、実際には彼女は当初改革派との融和・妥協を図っており、そのために批判されたりもしています。二つの勢力の融和のための政略結婚を積極的に進めたのも彼女です。それら全てが改革派を陥れるための策略だったという考え方もできますし、それ故に彼女は歴史上稀に見る毒婦として語り継がれることになりました。

しかし実際は、彼女は幼少期に孤児となった上、夫にも事故(ノストラダムスが予言したという説でも知られる無惨な死に様でした)で先立たれ、10人の子供たちも夭折したり不幸な身の上となったりするなど、家族との縁が薄く、高貴な血筋でありながら不遇の生涯といってもよいくらいの状態でした。彼女の子供達を最後にヴァロア朝は断絶しますが、彼女はまさに、ヴァロア朝断絶という最悪のシナリオの回避にこそ心を砕いていたといいます。一方、政治感覚は優れていたそうで、だからこそ宗教戦争に対して当初武力ではなく政治的解決を図ろうとしたようです。
実際、カトリーヌはむしろあとから事件の責任を押し付けられたのだという話もありますから、彼女もまた、本心とは違うところで運命に翻弄されていたのかもしれません。そうでないとしても、不遇であったが故に占いや予言に没頭していた彼女を操ることは、おそらく不可能ではなかったでしょう。


ユフィもまた、懸命に純粋に頑張ってきたのに、歴史上は卑劣な虐殺者として名を残すことになります。彼女を直接知らないものにとってはそれがすべてであり、その名は未来永劫にわたっておとしめられるのです。その一方で事件の真実は闇に葬られ、この状況を利用して正義の名を騙るものが歴史の勝者となります。
この不条理、この疑惑が、歴史の影には常に付きまとう。
制作者の意図とは違うかもしれませんが、私はむしろその恐怖と悲劇を感じました…


ついでながら、サン・バルテルミーの虐殺に重ねてみると、多少無理はあるものの、ナヴァル王アンリがゼロことルルーシュにあたると見ることができます。彼は最終的にはこの時の婚礼で王族の娘を妻にしていたことも幸いして(夫婦としてはまったく破たんしていて、後に正式に離婚しますが)フランス国王におさまることになり、さらにフランス国民の信任を得るためにちゃっかり正統派に改宗し、一方で改革派の怒りをおさめるために勅令を出して宗教弾圧をやめさせ、宗教上の自由と平等を保証することで事態を収束します。
最終的には良き王としてフランスを手に入れたこのナヴァル王アンリが、ホントはゼロのような策略家だったら…と思うと……

夜も眠れません(涙)



----------- 以下はこの記事の関連リンクです -----------
サン・バルテルミーの虐殺:wikipedia


---------- 追加(2007/05/03) ----------
TB経由でたくさん御訪問頂いています。ありがとうございますv
コードギアス関連の他の記事は下記をご参照下さい。

コードギアス:蠱毒あるいは「アリスゲーム」:コードギアスの今後の展開についての私の脳内妄想の御紹介…orz

コードギアスの戦略的太っ腹企画!:2007年夏の24&25話放映に先立って書いたものです。

コードギアス:リアルとファンタジーの境界1:コードギアスの世界観を、現実世界と比較してみました。意外とありうる!?という要素って結構たくさんありますよ〜。





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|雑感 > 漫画・アニメ関係|comments (3)|-|

Comments

牙弧|2007/04/20 01:27 AM
 政治的な駆け引き満載のアニメだと思いながら観ていましたが、やはりこのようなことは史実にもあったのですねー。(はー。)
 私も録画で遅れていたから、この回を観る前に雑誌の対談で櫻井くんが「ルルーシュにとってある意味ラスボスのような存在になってしまい…」と言っていたのが特区の創設のことだったのだなと、言い得て妙な表現と思っていたんですよ。しかし急転直下ですな、まさに。
 毎回「また話が複雑にー!」と叫んでましたがココまでやられると…どう収集つけてくれるんだろう。月並みな展開じゃもう満足できないぞ〜(^^;
あと、ロイドさんやニーナのことももっと知りたい。(←思うつぼにハマリまくり)
ゆうづき|2007/04/20 04:42 PM
コメントを拝見して、まず「櫻井くんって誰?」などと考えた私は既にファン失格ですね(orz)いや、もともとキャラ萌えで見てなかったのでそっち方面がまったくフォローできてません。とほほ。スザクの声優さんなんですね〜。
発言は「(ユフィが)ルルーシュにとってある意味ラスボス…」ということなのでしょうか。確かに、ルルーシュにとってというよりも、むしろ「黒の騎士団」にとって日本人(イレブン)分裂の大危機を招きましたもんね。
でも、あの急転直下の直前ではユフィはルルーシュにとってむしろ最大の理解者であり協力者になる可能性があったわけで、それを台なしにして名実共にユフィをラスボス化させてしまったのは、どうみてもルルーシュの誤算としか言い様がないのが…あまりに皮肉ですよね。それも、これまでフルに活用してきたギアス(特殊能力)による結果なわけで。

「コードギアス」は、私の場合は、異世界版三国志的な政治的かけひきや頭脳的な戦術の部分でひっぱられてついついみていたところが大きいのですが(ホントはガンダム系の展開は苦手なんですが、コードギアスは対立構図がまだ分かりやすくて助かりました。初めのうちは毎回基本設定がイントロで紹介されてたし)、そう思ってたところでど〜んと予想外の展開がきて、ああこの物語のテーマはここから具体化していくんだなと感じました。

牙弧さん御指摘のとおり、ロイドやニーナの今後は気になりますよね。ニーナはユフィのために核弾頭を製作中というのがもっぱらの噂です(笑)私の関心は、それがどんなふうに作中でカードになっていくのか…ですよね。ロイドさんもまだまだ裏のありそうなキャラですし…

でも、CLAMP的な展開だと(これは制作はサンライズですが)大化けしそうなのはミレイさんです…大化け、というか、最後にすごく重要でシリアスな役に転じそうな予感…人柱的な。(『東京-BABYLON-』の北都ちゃんとかぶるのでついそんな気が…)そういえば皇(すめらぎ)姓のキャラが出てきますね〜。これも続編以降のポイントキャラでしょうね…あとは見るからに怪しげなV・Vとか…

ああまた長々と書いてしまいました。こんなにはまっていたつもりはなかったんですが、どうしたんでしょう私…(orz)
いぶき|2020/06/26 12:44 AM
ユグノー派の中心指導者であったナヴァル公アンリとカトリーヌの息子にあたるアンリ3世はどうやら幼なじみ出会ったらしく、アンリ3世はユグノー戦争におけるカトリック派閥の中心人物だったらしいです。
一説ではアンリ3世が病で死去する際、フランスの未来をナヴァル公アンリに託したとか。(このアンリ二世を最後にヴァロワ朝は断絶します)
と、考えると、ルルーシュはその結末を考えるとアンリ3世の方に当てはまるのかなぁと思いました。(ナヴァル公でもありアンリ3世でもあったという方がいいかもしれませんが)

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